マイナス金利政策は、2016年に日本銀行が導入した取り組みです。
日本銀行とは、一般の銀行や政府がお金を預けるための銀行で、物価の安定や経済の成長を目的とする様々な金融政策を行っています。
マイナス金利政策もそういった日本銀行の金融政策の一つで、日本銀行が銀行から預かる預金にマイナス年0.1%の金利を付けるという内容です。
通常、銀行が日本銀行にお金を預けると、金利に応じた利息を受け取れます。
しかし、金利がマイナス年0.1%になるマイナス金利政策では逆の現象が起こります。
つまり本来もらえるはずの年0.1%分の利息を、一般の銀行が日本銀行に支払うのです(マイナス金利は2020年1月24日現在)。
マイナス金利政策の導入には、様々な効果があります。
たとえば、一般の銀行は日本銀行にお金を預けると利息を支払うことになるため、日本銀行にお金を預けないで積極的に使うようになります。
一般の銀行は企業に支援したり、株式投資でお金を使うので、企業や株式市場へ資金が流入されて経済の活性化が見込めます。
このようなマイナス金利政策による預金金利引き下げの影響を最も受けているのが、定期預金です。
なぜなら、定期預金は預金商品の中でも高金利な部類に入るため、金利引き下げの余地があって実施しやすいからです。
マイナス金利政策導入後は、多くの銀行が定期預金の金利を引き下げており、とくにスーパー定期や大口定期預金のように常時提供されている定番商品は、軒並み低金利化しています。
2016年に日本銀行が導入したマイナス金利政策は、多くの銀行の収益悪化の原因となっています。
そのためマイナス金利政策導入以降、各銀行は収益悪化を軽減するべく様々な取り組みを行っています。
たとえば代表的なのは預金金利の引き下げで、とくに定期預金の金利引き下げが積極的に行われています。
預金金利を引き下げると、銀行が利用者に支払う利息が減るため、支出が減って収益悪化を軽減する効果があるのです。
定期預金といえば、元本保証で資産運用ができる商品です。しかし、マイナス金利政策導入後は定期預金の利用者は減り、他の金融商品の利用者が増え始めています。
定期預金の金利引き下げで最も目立つのが、店頭表示金利の引き下げです。店頭表示金利とは預金商品に適用される基準金利のことで、市場金利に応じて定期的に見直されています。
通常は見直した後も現行の店頭表示金利が据え置かれがちですが、マイナス金利政策の導入後は多くの銀行が店頭表示金利を実際に引き下げています。
さすがに定期預金の店頭表示金利を引き下げすぎると利用者離れが起きるので、基本的に下げ幅はごく僅かです。
しかし、それでも満期日に受け取る利息へ与える影響は決して少なくありません。
中には段階的に少しずつ店頭表示金利を引き下げ、結果的に大幅な店頭表示金利の引き下げを実行した銀行もあります。
また、銀行の多くは店頭表示金利に一定の金利を上乗せする「金利上乗せ定期預金」を提供していますが、その「上乗せ金利」を減らす銀行もあります。
金利上乗せ定期預金とは、利用条件などの制限が多い代わりに適用金利がより高い定期預金で、店頭表示金利しか適用されない通常の定期預金よりも利息が得られます。
そして年金定期預金など、様々な種類があるのも金利上乗せ定期預金の特徴で、多くの利用者が口座開設をする商品です。しかし、マイナス金利政策導入後は上乗せ金利を減らす銀行が増えており、以前に比べると低金利傾向です。
金利優遇サービスや、特別金利キャンペーンの提供を停止する銀行もあります。
金利優遇サービスとは、取引実績などに応じて通常の定期預金の金利を更にアップするサービスです。そして特別金利キャンペーンとは、期間限定で金利上乗せ定期預金が提供されるイベントです。
これらは定期預金をより活用できるサービスですが、一部の銀行ではマイナス金利政策導入後にこれらの提供が停止されているので、全般的に高い金利の定期預金が利用しにくくなっています。
日本銀行が導入したマイナス金利政策は、大手銀行を中心とする全国的な定期預金の金利引き下げの原因となっています。
しかしマイナス金利政策導入後も、一部の個人向け定期預金では金利優遇が行われています。
なぜなら、あまりに定期預金の低金利化が著しいと利用者離れが深刻化するので、高金利な定期預金も提供する必要があるからです。
マイナス金利政策導入後の「金利優遇定期預金」は、従来よりも厳しい利用条件をクリアしないと口座開設ができない、ハードルの高い商品が目立ちます。
たとえばNISA口座を開設すると申込める商品や、過去に取引したことのない新規利用者しか申込めない商品、ATMやインターネットバンキングなど特定の方法でしか申込めない商品などです。
そのうえ、期間限定で提供されるケースも多く、取扱期間中に申込まないと口座開設できません。
しかし、このような厳しい利用条件が設定されている商品ほど、金利も優遇されています。そして一般的な定期預金の店頭表示金利よりも、高い特別金利で運用できます。
また、金利優遇定期預金を利用する絶好のチャンスとなっているのが、いわゆる設立記念のキャンペーンです。
なぜなら、マイナス金利政策導入後も一般の銀行がインターネット支店を新たに開設したり、新規のインターネット銀行が設立されたりしていますが、その際に必ずと言っていいほど定期預金のキャンペーンが実施されて金利が優遇されるからです。
銀行側が定期預金キャンペーンを行う目的は、もちろん手っ取り早く利用者を獲得するためです。利用条件もほぼないに等しいため、誰でも金利が優遇された定期預金を口座開設することができます。
さらに場合によっては、定期預金の金利優遇キャンペーンと同時に複数のキャンペーンが同時に提供されることもあります。
マイナス金利政策導入後の、全国的な定期預金の金利の引き下げを受けて注目を集めているのがインターネット銀行です。
インターネット銀行とは、実店舗を設置せず、インターネットバンキングやATM、郵送、テレホンサービスなどで各種金融商品の取引を受け付ける金融機関です。
実店舗や出張所などを設置する一般の銀行(メガバンクや地方銀行など)に比べて、経営にかかる経費が少ないのが特徴で、そのぶん預金金利が高く、手数料割引サービスも充実しています。
インターネット銀行はマイナス金利政策の導入後も、一般の銀行よりは高い金利の定期預金が提供されていることが多いです。
一般の銀行は、スーパー定期のような定番商品の金利が低く設定されています。しかし、インターネット銀行は定番商品も比較的高金利です。
加えてインターネット銀行は、定番商品とは別に期間限定でさらに高い金利の定期預金を提供する特別金利キャンペーンを実施することもあります。
しかし、一口にインターネット銀行といっても、定期預金の品揃えや適用金利はそれぞれの銀行ごとにバラバラです。
たとえば、決済サービスやATMサービスに力を入れていたり、ネット証券との連携に力を入れているインターネット銀行は、定期預金の品揃えや適用金利が低めです。
そのため各インターネット銀行の取扱い商品の傾向や、品揃え、適用金利などを確認してから取引したいです。
インターネット銀行は、今後も増える見込みです。
なぜなら、新しく設立される銀行はインターネット銀行の形態をとる場合が多く、たとえば2018年にはGMOあおぞらネット銀行や、ローソン銀行が設立されています。
さらに2020年1月現在は、九州の地銀グループがインターネット銀行の開業を目指しています。そしてLINEとみずほ銀行も共同出資でスマホ銀行の設立を目指しているため、今後登場する新しいインターネット銀行にも注目です。
マイナス金利政策は、多くの銀行の収益減や経営悪化を引き起こしており、各銀行は定期預金の引き下げや特別金利キャンペーンの停止などで収益確保に取り組んでいます。
しかし、定期預金を低金利にするにも限界があり、他の手段で収益確保を行う必要があります。
振込手数料やATM利用手数料といった各種手数料の値上げ、通帳レス口座の提供による印紙税の削減など様々な取り組みがありますが、注目を集めているのが口座維持手数料の新設です。
口座維持手数料とは、定期的に普通預金口座の利用料を徴収するもので、2020年1月現在メガバンクが導入を計画しています。
日本国内では、SMBC信託銀行がすでに口座維持手数料を徴収しています。月額で2,000円ですが、所定の条件を満たせば無料にできます。
たとえば、定期預金などの月間平均総取引残高が一定水準を超えていたりすると、口座維持手数料が無料になります。
SMBC信託銀行以外の銀行が口座維持手数料を導入する際にも、このような無料化サービスの提供される可能性が高いです。
一方で海外の多くの銀行は、すでに口座維持手数料を導入しています。
そして、SMBC信託銀行のように口座維持手数料を無料にできる銀行が多く、所定の条件を満たせば無料で普通預金口座を保有できます。
銀行ごとに口座維持手数料の無料化の条件は様々ですが、「一定以上の預金残高がある」「定期的に入出金などの取引がある」「定期預金を取引している」などの条件で、口座維持手数料が無料になりやすいです。
口座維持手数料と似たものに、「未利用口座管理手数料」があります。
日本でも一部の銀行がすでに取り入れているもので、一定期間以上取引がない普通預金口座から徴収する手数料を、未利用口座管理手数料などと呼びます。
日本では複数の金融機関と取引する利用者が珍しくないため、あまり使われていない預金口座が少なくありません。
未利用口座管理手数料は、そんな預金口座が休眠口座(長期間取引がなく利用者と連絡も取れない預金口座)になるのを防いだり、銀行の新たな収益源となる効果が見込まれています。
新規導入を検討している銀行もあり、今後徴収する銀行が増える可能性があります。
そこで利用者が考えたいのが、定期預金の利用です。
なぜなら普通預金をしばらく取引していなくても、定期預金を利用していれば未利用口座管理手数料が無料になるケースが多いからです。
そのため、未利用口座管理手数料の支払いを防ぐためにも、定期預金の口座開設が効果的です。