iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を拠出し、自分で運用商品を選び、掛金と運用益の合計額を老後に受け取る私的年金制度です。
運用商品には投資信託、定期預金、保険商品などがあり、定期預金は「元本確保型商品」に分類されます。
iDeCoの定期預金は値下がりしにくい一方、金利が低いと、口座管理手数料が利息を上回る可能性があります。
そのため、元本確保だけで選ぶのではなく、税制優遇、手数料、運用期間、物価上昇、受取時の税金まで含めて判断することが重要です。
iDeCo専用の定期預金は、iDeCo口座へ拠出した掛金を一定期間預ける商品です。
一般の銀行口座に作る定期預金とは異なり、iDeCo口座の中で運用されます。利息や満期金を自由に引き出すことはできず、原則として老齢給付金を受け取れる年齢まで制度内で運用を続けます。
1年満期の自動継続定期預金が多く、満期になると元金と利息を合わせて、継続日時点の金利で再び預け入れます。
「定期預金を解約すること」と「iDeCoから資金を引き出すこと」は別です。商品を解約して他の商品へ変更しても、資金はiDeCo口座内に残ります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 値動き | 原則として預入元本が維持される |
| 利息 | 商品ごとの適用金利で計算 |
| 満期 | 1年などの満期後に自動継続する商品が多い |
| 中途解約 | 商品変更時に中途解約利率が適用される場合がある |
| 引出し | 原則として受給開始年齢まで自由に引き出せない |
| 主なリスク | 低金利、手数料負担、インフレによる実質価値低下 |
拠出した掛金は、全額が小規模企業共済等掛金控除の対象です。
課税所得から掛金を差し引けるため、所得税と住民税が軽減されます。
たとえば毎月1万円、年間12万円を拠出し、所得税率10%・住民税率10%と仮定すると、税負担の軽減額は年間約24,000円です。
ただし、所得税・住民税を負担していない人は、掛金所得控除による税負担軽減を受けられません。
一般の定期預金の利息には、原則20.315%の税金がかかります。
iDeCo口座内の定期預金利息は、運用中は非課税で再投資されます。
ただし、定期預金の金利自体が低ければ、非課税効果による金額も小さくなります。
一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金で受け取る場合は公的年金等控除の対象です。
勤務先の退職金や他の企業年金、公的年金と受取時期が重なると、控除枠を十分に使えない場合があります。
「受取時は必ず非課税」ではありません。受取方法と受取時期を含めた税金の確認が必要です。
掛金は月額5,000円以上、1,000円単位で設定します。上限は加入区分や企業年金の状況によって異なります。
| 主な加入区分 | 月額上限 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自営業者・フリーランス・学生など | 68,000円 | 国民年金基金などとの合算 |
| 企業年金等に加入していない会社員 | 23,000円 | 勤務先の制度を確認 |
| 企業年金等に加入する会社員・公務員 | 原則20,000円以内 | 企業型DC事業主掛金等との合算制限あり |
| 国民年金第3号被保険者 | 23,000円 | 所得がなければ所得控除効果はない |
企業年金等に加入する人は、企業型DCの事業主掛金額や他制度掛金相当額によって、実際のiDeCo上限が20,000円未満になる場合があります。
2026年12月1日から、iDeCoなどの拠出限度額引上げが予定されています。
| 区分 | 改正後の主な上限 |
|---|---|
| 会社員・公務員など第2号加入者 | 企業年金と合算して月額62,000円 |
| 自営業者など第1号加入者 | 国民年金基金と合算して月額75,000円 |
この改正は2026年8月2日現在ではまだ施行前です。現在の掛金設定には、改正前の上限が適用されます。
また、加入可能年齢の引上げなども予定されています。実際の適用条件や手続きは、施行時の公式案内をご確認ください。
一般の定期預金は口座管理手数料がかからないことが多い一方、iDeCoでは制度運営のための手数料がかかります。
| 手数料 | 主な内容 |
|---|---|
| 加入・移換時手数料 | 国民年金基金連合会へ初回2,829円 |
| 掛金収納等手数料 | 掛金納付に関連する手数料 |
| 事務委託先金融機関手数料 | 資産管理や給付事務に関する手数料 |
| 運営管理機関手数料 | 金融機関により0円または有料 |
| 給付時・還付時手数料 | 受取や掛金還付の際に発生 |
国民年金基金連合会は、2026年度に加入者の手数料見直しを案内しています。最新の金額は加入先の運営管理機関で確認してください。
金融機関の運営管理手数料が0円でも、制度全体の手数料が完全に0円になるわけではありません。
仮に、iDeCoの定期預金残高が100万円、金利が年0.10%なら、年間利息は約1,000円です。
口座管理に関する手数料が年間2,000円を超える場合、定期預金の利息だけでは手数料を補えません。
もっとも、iDeCoでは掛金の所得控除による税負担軽減があるため、制度全体の損得は利息だけでは判断できません。
課税所得がある人は、所得控除効果が手数料を大きく上回る場合があります。一方、所得控除を受けられない人は手数料負担をより慎重に確認する必要があります。
iDeCo専用定期預金の金利は、加入先の運営管理機関が公開する商品一覧や商品説明書で確認します。
同じ銀行名の定期預金でも、一般預金の商品とiDeCo専用商品の金利は同じとは限りません。
確認する項目は次のとおりです。
iDeCo口座内の定期預金は、一般に預金保険制度の対象となる預金商品です。
ただし、加入者が同じ金融機関に持つ一般預金とは別枠で管理される仕組みがあります。具体的な名寄せや保護の取扱いは、商品説明書と運営管理機関の案内を確認してください。
投資信託は預金ではないため、預金保険制度の対象ではありません。信託財産として分別管理されます。
毎回拠出する掛金を、どの運用商品へ何%ずつ振り分けるか指定する手続きです。
定期預金100%、投資信託50%・定期預金50%など、自分で割合を決めます。
すでに保有している運用商品を売却・解約し、別の商品へ買い替える手続きです。
掛金の配分変更だけでは、過去に積み立てた定期預金は移動しません。既存資産も変更する場合はスイッチングが必要です。
定期預金を満期前にスイッチングすると、中途解約利率が適用される場合があります。
掛金の配分指定を行わない場合、一定期間後に加入先が定める指定運用方法へ振り向けられる場合があります。
指定運用方法へ移るまでの間は、運用されない現金相当の未指図資産として管理され、利息が付かないことがあります。
加入後は、期限内に運用商品の配分を指定してください。
iDeCoは毎月定額拠出が基本ですが、加入区分によっては、掛金を年1回以上の任意月へまとめる月別指定(年単位)拠出を利用できます。
ただし、企業型DCや確定給付企業年金等に加入している会社員、公務員は、年単位拠出を選択できません。
「年1回拠出なら全員が11カ月分の手数料を節約できる」とは一律にいえません。加入区分、手数料体系、拠出方法を確認する必要があります。
iDeCoの資産は、原則として60歳になるまで自由に引き出せません。
60歳から受け取るには、通算加入者等期間が10年以上必要です。加入期間が短い場合は、受給開始可能年齢が後ろへずれます。
一定の要件を満たす場合に限り、脱退一時金、障害給付金、死亡一時金などを受け取れます。
住宅購入、教育費、病気、失業などを理由に自由に解約できる制度ではありません。
加入者や運用指図者が死亡した場合、遺族は死亡一時金を請求できます。
死亡一時金は相続税の対象となり、死亡後3年以内に支給が確定したものは、税法上、みなし相続財産として死亡退職金の非課税枠が適用される場合があります。
受取人の順位や請求期限があるため、加入先へ早めに確認する必要があります。
値下がりを避けたいからといって、必ず定期預金100%にする必要はありません。
定期預金と投資信託を組み合わせ、資産全体の値動きを抑える方法があります。
| 考え方 | 配分例 |
|---|---|
| 元本確保を最優先 | 定期預金100% |
| 値動きを抑えながら成長も目指す | 定期預金50%・投資信託50% |
| 長期成長を重視 | 投資信託中心・定期預金を一部 |
| 受取時期が近い | 段階的に定期預金の割合を増やす |
適切な配分は、年齢、収入、資産額、運用期間、値下がりへの耐性によって異なります。
加入先となる運営管理機関を選び、申込書またはオンライン手続きで加入を申し込みます。
基礎年金番号、本人確認情報、掛金額、引落口座、勤務先の企業年金状況などを申告します。
国民年金基金連合会などによる資格確認を経て、加入手続きが完了します。
手続き期間は申込方法や加入区分により異なります。通常の定期預金のように即日で運用開始できるものではありません。
元本確保型商品ですが、商品変更による中途解約や手数料負担まで含めると、iDeCo口座全体の評価額が拠出額を下回る可能性はあります。
引き出せません。解約資金はiDeCo口座内に残り、別の商品へスイッチングできます。
月額5,000円以上、1,000円単位です。上限は加入区分や企業年金の状況によって異なります。
受けられます。税制優遇は運用商品ではなく、iDeCo制度への掛金拠出に対して適用されます。
iDeCo口座内での運用中は非課税です。ただし、受取時には受取方法に応じて課税関係が生じます。
制度改正により引上げが予定されています。2026年8月2日現在は施行前なので、現在の掛金には改正前の上限が適用されます。
iDeCoの定期預金は、値下がりを避けながら老後資金を積み立てたい人向けの元本確保型商品です。
掛金の所得控除と運用益非課税は利用できますが、低金利では口座管理手数料が利息を上回り、物価上昇に負ける可能性があります。
定期預金100%が適しているか、投資信託と組み合わせるかは、運用期間、年齢、税負担、リスク許容度によって異なります。金利だけでなく、手数料、掛金上限、受取時の税金、スイッチング条件を確認して加入先を選びましょう。
