大口定期預金は、スーパー定期や期日指定定期預金などと並ぶ、全国の金融機関が取扱う代表的な定期預金の一つです。
最低預入金額が1,000万円と高額なのが特徴で、少額から預けられる他の定期預金とは違って大口の資産運用に特化しています。
また大口定期預金には元本割れがないので、元本保証での資産運用ができます。
大口定期預金を口座開設する際には、預入金額や預入期間を設定します。預入金額は1,000万円以上で上限はありませんが、しばらく使う予定のない余裕資金を預けるなどが考えられます。
そして預入期間は、商品に設定された選択肢の中から選びます。一般的には最短で1ヶ月、最長で10年です。
大口定期預金を含む多くの定期預金では、預けた資金を満期日まで払い戻せないため、その点を考慮して自分に合った預入期間を選ぶようにします。
もし、どうしても預入期間中に払い戻したい場合には、中途解約をすれば元金と利息を払い戻せます。
ところが中途解約をすると、「中途解約利率」という約定利率(やくじょうりりつ)よりも低い適用金利で利息が計算されてしまいます。
大口定期預金は、口座開設のときに預入金額を一括で預入する必要があるため、事前に1,000万円以上の資金を用意しておきます。
たとえば、退職金や相続金や当選金などの1,000万円以上の臨時収入、もしくは長年かかって貯めた貯蓄などを預けたりします。
ただし退職金や相続金は、それ専用の特別な定期預金があり、適用金利が優遇されていることが多いです。
大口定期預金の口座開設手続きは、おもに金融機関の店舗窓口で受け付けています。また一部の金融機関ではインターネットバンキングでも行えます。
インターネットバンキングとは、24時間いつでもパソコンやスマートフォンから金融機関と取引ができるサービスです。
インターネットバンキングで口座開設した大口定期預金は預金通帳や証書が発行されません。しかし、代わりに残高照会や中途解約手続きがインターネットバンキングで行えます。
現在、大口定期預金はスーパー定期や期日指定定期預金と同じ店頭表示金利が適用されることが多いです。
しかし一部の金融機関では、大口定期預金の店頭表示金利を高めに設定したり、取引実績に応じて大口定期預金の適用金利が優遇されます。口座開設をするに際しては、最新の金利情報や適用金利の優遇サービスの有無を確認しましょう。
ただしインターネット銀行の定期預金なら、1,000万円以上の資金を大口定期預金よりも高い金利で運用できます。
なぜならインターネット銀行は実店舗がないぶん経費が抑えられるので、一般的な金融機関に比べて預金商品の適用金利を高く設定できるからです。
実際のところ、インターネット銀行の定期預金の適用金利は高めなので、一般的な大口定期預金に同額を預けるよりも多くの利息が受け取れます。
ちなみに、インターネット銀行の定期預金は預入金額に上限のない場合が多く、1,000万円以上の資金でも運用できます。
また大口定期預金の適用金利は、中途解約した場合には下がります。中途解約とは、満期日前に大口定期預金を解約して元金と利息を払い戻すことです。
諸般の事情からどうしても資金が必要になったときなどに中途解約すると、本来適用されるはずだった適用金利(約定利率)ではなくて、中途解約利率で利息が計算されます。
その場合、中途解約利率は口座開設してから中途解約するまでの期間に応じて決まり、約定利率よりもかなり低い金利です。口座開設してから中途解約するまでの期間が短いと無利息になる場合もあります。
大口定期預金は1,000万円以上の資産運用に特化していますが、1,000万円以上の資金を預けると預金保険制度で保護される金額を超えてしまいます。
預金保険制度とは、万が一金融機関が経営破綻した際に、当該金融機関に利用者が預けていた預金が保護されるしくみです。
しかし預金保険制度で保護されるのは、一金融機関につき一利用者あたり1,000万円とその利息までなので、1,000万円以上の資金しか預けられない大口定期預金は、万が一の際に超過分が保護されません。
通常は金融機関が経営破綻しそうになると、政府が巨額の公的資金の投入を行います。
公的資金を投入して当該金融機関を一時的に国有化すると、預金保険制度の発動を回避して預金を全額保護できるためです。1971年に預金保険制度が導入されてから、長らく預金保険制度は発動されませんでした。
しかし2010年に日本振興銀行が経営破綻した際、初めて預金保険制度が発動されました。日本振興銀行は不良債権比率が高く、金融ネットワーク非加盟で他の金融機関が連鎖破綻する可能性がないことから、公的資金の投入が見送られて破綻処理に至ったのです。
また預金保険制度の対象金融機関は、日本国内の銀行や信用金庫などの本支店に限られます。対象となる金融機関の海外支店、政府系金融機関(日本政策金融公庫など)、外国銀行の在日支店は対象外です。
預金保険制度の対象外の金融機関や支店に預けられた資金は保護されない点を留意しておきましょう。
また預金保険制度で保護されるのは大口定期預金のような円定期預金や円普通預金、元本補てん契約のある金銭信託、保護預り契約のある金融債などで、外貨預金や他人名義の預金などは対象外です。
このように大口定期預金は預金保険制度の超過分を損失する可能性がありますが、当座預金や決済用普通預金のような利息のつかない預金商品は、万が一の際にも預けた資金が全額保護されます。
したがって預金の保護を優先する場合は、大口定期預金よりも当座預金や決済用普通預金に資金を預けることが考えられます。
ただし、当座預金は小切手や手形で支払われる企業や個人事業主向けの預金商品なので、個人利用者の口座開設には向きません。
もう一方の決済用普通預金は、利息が付かない点以外は通常の普通預金と同じで、公共料金やクレジットカードの支払い口座、給与や年金の受取口座に指定できます。
さらに定期預金を担保にすれば、当座貸越(預金残高が不足した際に不足分を自動で借り入れること)も利用できます。
多くの金融機関では定期的に期間限定の定期預金キャンペーンを実施しており、キャンペーン期間中はいつもよりも高い金利水準の定期預金を利用できます。
しかし、そういった定期預金キャンペーンの対象商品はスーパー定期であることがほとんどで、大口定期預金は対象外です。
したがって定期預金キャンペーンを活用したい場合は、スーパー定期の利用が中心になります。
また1,000万円以上の金額を資産運用する際は、大口定期預金以外の定期預金のほうが適している場合もあります。
たとえば、金融機関では潤沢な資産を持つ高齢者向けに、適用金利を優遇した「年金定期預金」などの商品を取扱っています。
それらを利用すれば、大口定期預金よりも高い金利水準の資産運用ができます。
さらに大口定期預金には、一部解約ができない注意点もあります。
一部解約とは預入期間中に預入金額の一部を引き出すサービスで、定期預金の運用を続けたまま中途解約せずに必要な金額を引き出すことです。
定期預金は口座開設したら一切の入出金ができなくなるので、しばらく使う予定のない余裕資金を預けるのが普通です。しかし、場合によっては口座開設した後に預けた資金の一部が必要になることがあり、そんなときに活用できるのが一部解約なのです。
ところが一部解約は数少ない特定の定期預金でしか利用ができず、大口定期預金では使えません。
また、大口定期預金はマル優の対象外です。
マル優とは「障害者等の少額預金の利子所得等の非課税制度」のことで、一部の預金や債券の利息が非課税になるものです。
通常の預金商品は利息の20%近くが税金として差し引かれますが、マル優を利用すればこの約20%分の利息も丸ごと受け取れます。
しかし、非課税になるのは一利用者につき元金350万円とその利息までなので、1,000万円以上の金額しか預けられない大口定期預金は非課税が適用されません。
そのためマル優の利用資格を持つ場合は、大口定期預金ではなくて、マル優で非課税の対象となるスーパー定期のようなより少額の定期預金を活用するのも一法です。
大口定期預金を利用する際は、口座開設する前に初回満期日以降の取扱いを確認しましょう。
なぜなら、店頭表示金利に上乗せ金利がつくタイプの大口定期預金は、初回満期日でその適用金利の優遇が終了することが多いのです。
そして初回満期日以降は、継続日の店頭表示金利のみ(上乗せ金利なし)で運用されることになります。
一方で大口定期預金は固定金利であるため、万が一預入期間中に大口定期預金の店頭表示金利が変更されても、口座開設のときの店頭表示金利が満期日まで適用されます。
そのため、金利情勢が不安定で預入期間中に店頭表示金利の引き下げが予想される場合には、預入期間を長めに設定することで、当初の高い金利のままで資産運用を続けられます。
また、大口定期預金は利用条件が厳格ではないので、個人や法人を問わず誰もが口座開設できる点も特徴です。
たとえば大口定期預金と同様に1,000万円以上の金額を資産運用できる定期預金には、「退職金専用定期預金」や「相続定期預金」がありますが、これらの定期預金は退職金や相続金しか預けられないという厳しめの利用条件があります。
退職金専用定期預金や相続定期預金は、大口定期預金よりも高い金利である一方で、退職金や相続金の受取から一定期間が経過していると口座開設できない厳格さもあります。
ほかにも、事前に他の定期預金で退職金や相続金を資産運用していると、退職金専用定期預金や相続定期預金を利用できない金融機関もあります。
このような条件の厳しさによって利用できない場合は、無条件で口座開設のできる大口定期預金で資産運用できます。
一方で大口定期預金での資産運用には注意点もあります。
大口定期預金は1,000万円以上の資産運用ができますが、万が一金融機関が経営破綻したときに預金保険制度で保護されるのは、一金融機関につき一利用者あたり元金1,000万円とその利息までです。
これをこえる超過分は損失する可能性があり、同じ金融機関で数口の大口定期預金(総額数千万円)を同時に利用すると、万が一の際に失ってしまいます。
しかし、複数の別々の金融機関に大口定期預金を分散しておけば、それぞれの金融機関で1,000万円とその利息までが保護されるので、万が一の際にも安心です。
適用金利でいうと、オリックス銀行のeダイレクト定期預金は預入金額ごとにスーパー定期、スーパー定期300、大口定期の3種類があり、いずれも預入期間に応じて適用金利が変動します。
大口定期の場合は、預入期間1年だと適用金利は年0.50%ですが、預入期間2年だと年0.50%、3年だと年0.60%、5年だと年0.70%です。
そのため5年以上の資産運用が可能な場合は、eダイレクト定期預金の大口定期を活用するのも一法です。
利便性重視なら、常陽銀行の大口定期預金です。
なぜなら、常陽銀行の大口定期預金は口座開設のときに1,000万円以上の金額を預ける必要がありますが、その後も追加で預入できるのです。
通常の大口定期預金は口座開設の後に入出金ができなくなりますが、常陽銀行の大口定期預金は預入期間中いつでも好きな時に好きな金額を大口定期預金へ追加できます。
常陽銀行の大口定期預金は、1ヶ月〜10年まで好きな預入期間を設定できますが、預入期間を長くした場合は途中で新たな余裕資金の発生することがあります。
そのようなときには追加で預入をして、余裕資金を預けるとよいでしょう。
ただし、常陽銀行の大口定期預金は追加での預入はできても、預入金額の一部を満期日前に引き出す一部解約はできません。