銀行を中心とする金融機関では、普通預金や定期預金といった様々な預金商品を利用できます。その中でもよく知られているのが定期預金です。
定期預金は口座開設をするときに預入金額や預入期間を設定する預金商品で、原則として満期日(預入期間終了時)まで預金を払い戻せないという特徴があります。
しかし、代わりに適用金利が高く設定されており、満期日には普通預金などよりも多めに利息を受け取れます。
基本的に定期預金(および預金商品全般)の適用金利は、年利で表示されています。年利とは1年あたりの利率で、すなわち1年間預けた際に適用される金利のことです。
そのため、たとえば年利が年0.2%の定期預金でいうと、年0.2%という値がそのまま適用されるのは同定期預金を1年間預けた場合です。逆にいうと、預入期間が1年以下の場合は、同じ定期預金を利用しても実際の適用金利は年0.2%よりも低い値になります。
たとえば預入期間が1年の半分の6ヶ月だと、実際の適用金利も年0.2%の半分、預入期間が3ヶ月だと適用金利も年0.2%の4分の1(3ヶ月は1年の4分の1の長さであるため)まで下がってしまいます。もちろん適用金利が下がる分、満期日に受け取る利息も少なくなります。
このように預入期間が1年以下だと、実際の適用金利は年利よりも低金利になります。
そのため預入期間1年以下の定期預金を利用する際は、実際の適用金利が低くなることを考慮して、より金利の高い定期預金を口座開設したいです。
けれども今は全国的に定期預金が低い金利なので、高い金利の定期預金も少ないです。さらに高い金利の定期預金は利用条件や取扱期間などが限られており、条件が合わないとなかなか口座開設ができません。
定期預金の適用金利は満期日まで預けた場合に適用されるもので、万が一、定期預金を満期日まで預けずに途中で中途解約した場合は、中途解約利率という専用の適用金利で利息が計算されます。
中途解約利率は、その定期預金で本来適用されるはずの適用金利よりも低いのが特徴で、一般的には口座開設から中途解約までの期間が短いほど低くなります。
口座開設から中途解約までの期間によっては普通預金並みの低い金利になることもあり、場合によっては無利息になってしまいます。
1ヶ月もの定期預金とは、預入期間1ヶ月の定期預金を指します。すぐに満期日が来るために、初心者でも資産運用をしやすいです。
1ヶ月もの定期預金には、特別金利キャンペーンもあります。適用金利(年利)が優遇されていることが多いため、スーパー定期や大口定期預金といった通常の定期預金よりも金利が高いです。
そのため口座開設の多い、短期運用向け定期預金となっています。
しかし、各金融機関が表示する1ヶ月もの定期預金の適用金利は、年利で表示されている点に気をつけたいです。
年利は基本的に1年間預けた場合にしか適用されないため、1ヶ月しか預けられない1ヶ月もの定期預金では、年利の12分の1の値が実際の適用金利となります(1ヶ月は1年の12分の1であるため)。
したがって1ヶ月もの定期預金を利用する際は、表示されている年利を鵜呑み(うのみ)にせず、実際の1ヶ月分の適用金利を計算しましょう。
1ヶ月もの定期預金の実際の適用金利は、年利を12で割ることで大まかに算出することができます。
たとえば、楽天銀行の「資金お引越し定期預金」は、他の金融機関からの振込資金を預けるのに特化した1ヶ月もの定期預金で、年利は年0.10%という商品です。
しかし、これは1年間預けた場合の年利で、1ヶ月あたりの適用金利を算出するには、年0.10%という値を12で割る必要があります。
したがって、0.10÷12は0.008(小数第四位を四捨五入)となり、「資金お引越し定期預金」を預けた際の実際の適用金利は、約0.008%だと分かります(2021年9月21日現在)。
この1ヶ月分の適用金利と預入金額を掛けると、満期日に受け取る利息も試算できます。
しかし、利息からは地方税や復興特別所得税が差し引かれます。そのため実際に受け取るのは税引後の利息で、試算した税引前の利息よりも少なくなるという点には留意しましょう。
また、楽天銀行などの一部の金融機関では、公式サイトで定期預金の利息を試算できる利息シミュレーションサービスを取扱っており、自力で計算しなくても利息を試算できます。
しかし、各金融機関の利息シミュレーション・サービス同士で試算結果にわずかな誤差があり、自力で試算した利息も利息シミュレーション・サービスの試算結果と異なる場合があります。
そのため、試算結果はあくまでも参考程度に留めておきましょう。
3ヶ月もの定期預金は預入期間が3ヶ月の定期預金のことで、こちらも1ヶ月もの定期預金と同じく、特別金利キャンペーンに伴って提供される商品です。
利用条件や取扱期間が限られる代わりに高い金利であることが多いです。しかし、特別金利キャンペーンで宣伝されている適用金利は年利なので、実際に3ヶ月もの定期預金で適用されるのは、表示されている年利の4分の1にあたる値です(3ヶ月は1年の4分の1であるため)。
したがって、3ヶ月もの定期預金を口座開設する前に、表示されている年利の4分の1にあたる値を計算して、実際の適用金利を確認しましょう。
3ヶ月もの定期預金において、年利の4分の1にあたる値を求めるには、年利を4で割ります。
たとえば年利が年0.2%の場合は、0.2÷4=0.05となります。よって、年利が年0.2%の定期預金の3ヶ月分の適用金利は、0.05%になります。
このように3ヶ月分の適用金利は、年利よりもだいぶ低くなってしまうため、3ヶ月もの定期預金の利用には注意しましょう。
ただし、この試算結果はあくまでも目安であり、実際の3ヶ月もの定期預金の適用金利とわずかに誤差の生じることがあります。
また満期日後に受け取る利息は、復興特別所得税などが差し引かれた税引後の利息なので、利息への課税分を考慮すると実質的な適用金利はさらに低くなります。
このように3ヶ月分の適用金利が分かれば、3ヶ月もの定期預金を口座開設する際の参考になります。
たとえば、auじぶん銀行はデビュー応援プログラムと称して、新規で普通預金口座を開設した利用者限定で特別金利の「3ヶ月もの円定期預金」を提供しています。適用金利(年利)は年0.5%なので、定期預金としては高い金利です。
しかし、実際の3ヶ月分の適用金利はこの年0.5%を4で割った値、つまり0.5÷4で0.125%となります。年0.5%に比べるとだいぶ低くなります(2021年9月21日現在)。
6ヶ月もの定期預金も適用金利が優遇されている商品が人気です。しかし、1ヶ月ものや3ヶ月もの定期預金と同じく、6ヶ月もの定期預金の適用金利も年利で表示されています。
そのため、1年の半分の6ヶ月しか預けられない6ヶ月もの定期預金では、年利の半分にあたる値が実際の適用金利となります。すなわち、年利を2で割ると6ヶ月分の大まかな適用金利が算出できます。
また、算出した適用金利と実際の適用金利に誤差が生じる場合がある点や、利息が課税対象(地方税や復興特別所得税)となっていて、原則として税引後の利息を受け取る点も、1ヶ月ものや3ヶ月もの定期預金と同じです。
たとえば、西武信用金庫の「退職金専用定期預金」は、退職金を資産運用するための個人向け定期預金です。
預入期間6ヶ月、預入金額100万円以上で、預入金額に応じて適用金利(年利)が変動する仕組みです。
具体的には預入金額100万円以上で年0.3%です。ですので2で割った値が6ヶ月分の適用金利となります。すなわち、0.3÷2で0.15なので、0.15%が適用金利です(2021年9月21日現在)。
広島銀行でも「退職金専用定期預金」を取扱っていますが、こちらはスーパー定期の店頭表示金利(年0.01%)に所定の上乗せ金利が付く仕組みです。
上乗せ金利の値は、取引実績、預入期間、預入金額によって異なります。最も上乗せ金利が多いのは、預入期間3ヶ月で預入金額1,000万円以上、なおかつ広島銀行で給与振込や年金受取を利用している場合で、年0.80%上乗せされます。
スーパー定期の店頭表示金利の年0.002%と合計すると、0.002+0.80で、年0.802%です。つまりこれが実際の適用金利(年利)となります。
そして預入期間3ヶ月の場合は、年0.802%を4で割った0.2005%が実際の適用金利です(2021年9月21日現在)。
この広島銀行の「退職金専用定期預金」は、基本的に満期時の取扱い方法が自動継続なので、満期日以降も口座開設したときに設定した預入期間や預入金額で運用が継続されます。
しかし、上乗せ金利は持ち越されず、初回満期日で終了してしまいます。そのため自動継続後の適用金利は改めて計算し直す必要があります。