全国の金融機関の中で一部のメガバンクや地方銀行では、株主優待制度を提供しています。
株主優待制度とは、株式会社が株主(当該株式会社の株券を保有する個人や法人)に対して、優遇サービスを提供する制度のことです。
銀行も株式会社の一種なので、個人や法人は各銀行の株券を購入して株主になれて、当該銀行の株主優待制度を利用できます。
株主優待制度で提供される優遇サービスは「株主優待定期預金」のような金融商品が中心です。
株主優待定期預金とは、いわゆる金利優遇定期預金のことです。一般的な定期預金の店頭表示金利に上乗せ金利がついており、特別金利で利用できます。
そして満期日に受け取る利息も多くなります。
このように銀行の株主優待制度は魅力的ですが、利用対象者は各銀行が設定する条件を満たした個人や法人のみです。
たとえば、通常は株主優待制度を利用するには一定基準以上の保有株数(保有する株券の数)が必要です。銀行によっては継続保有期間(株券を継続して保有している期間)も一定基準以上でないと、株主優待を受けられません。
そして株主優待制度を利用するのに必要な保有株数や継続保有期間の具体的な基準は、銀行によって違います。
このようにして株券を購入して銀行の株主となり、株主優待を受ける条件を満たすと、銀行から優待券が送付され、株主優待定期預金などの優遇サービスが利用できます。
ただし、優待券1枚につき1種類の優遇サービスしか受けられない場合も多いため、優遇サービスが複数用意されている際は計画的に利用したいです。
また株主優待定期預金の商品概要(預入期間や預入金額など)や注意事項など、それらの内容も銀行ごとに異なります。
一般的に株式会社の株券を購入して株主になると、業績や保有株数に応じて配当金を受け取ったり、株主優待を利用できます。
株式会社の一種である銀行でも、株主が配当金を受け取れます。
さらに株主優待制度の利用対象者になると、適用金利が優遇された株主優待定期預金なども利用できます。
ただし、株主優待定期預金の口座開設をするには、当該銀行が株主に送付する優待券(名称は銀行ごとに異なります)を店舗窓口で提示する必要があります。
この優待券には利用期限があるので、期限が切れる前に口座開設をします。
さらに優待券はたいてい、家族を含む第三者に譲渡や貸与できず、優待券を再発行したり、当該銀行が提供する別のキャンペーンや金利上乗せサービスと併用もできません。
さらに株主優待定期預金の細かい利用条件や利用方法は、銀行ごとに異なります。
たとえば長野銀行では株主本人はもちろん、生計を一緒にする家族も優待券で株主優待定期預金を口座開設できます。
万が一、株主本人が株主優待定期預金を利用する機会がなくても、その家族が株主優待定期預金で資産運用ができます。ただし1枚の優待券で株主優待定期預金が1口しか口座開設できません。
また数種類の優遇サービスがある銀行もあります。
たとえば、広島銀行では優待券で金融商品の優遇を受けられて、商品を定期預金、投資信託、相続関連サービス、証券関連取引の4種類の中から選べます。
優遇の内容は定期預金なら金利の上乗せで、他の3種類は手数料の一部キャッシュバックです。しかし優待券1枚につき1種類の金融商品の優遇しか受けられません。
株主優待定期預金の商品概要は銀行ごとに異なりますが、預入期間や預入金額には共通点もあります。
たとえば、各銀行の株主優待定期預金は、だいたい預入期間が1年です。さらに満期時の取扱い方法が自動継続型になっている場合が多く、満期日後も口座開設時と同じ預入期間、預入金額で再び運用が始まります。
株主優待定期預金は一般的な定期預金の店頭表示金利に上乗せ金利がありますが、初回満期日以降は上乗せ金利が終了します。そのため自動継続によって初回満期日以降も運用を続ける場合は、適用金利が下がります。
株主優待定期預金の預入金額は、最低10万円以上の銀行が多いです。
スーパー定期のような一般的な定期預金は1,000円程度の低額から預けられるので、それに比べると株主優待定期預金は一定金額以上の資金が必要です。
一方で、株主優待定期預金の預入限度額はスーパー定期などに比べて低く、たとえば200万円や500万円程度が上限の場合が珍しくありません。
預金商品は預入金額が多いほど満期日に受け取る利息が増えるので、できるだけ預入限度額が多い株主優待定期預金を利用したいです。
一部の銀行の株主優待定期預金では、保有株数に応じて預入限度額が変動するので、株券をより多く購入して保有株数を増やすことで預入限度額を拡大できます。
また、ほとんどの株主優待定期預金は、預入資金の出所(でどころ)を問いません。しかし、一部の株主優待定期預金は新規資金、または前年度の株主優待定期預金の満期資金しか預入資金の対象になりません。
新規資金とは、株主優待定期預金に預ける目的で当該銀行の預金口座に新規で入金した資金のことです。
もう一方の、前年度の株主優待定期預金の満期資金とは、前年度の優待券で利用した株主優待定期預金を満期解約して、その際に払い戻された元金と利息のことです。
預入期間や預入金額が制限されることの多い株主優待定期預金ですが、銀行によっては取扱い支店も制限されます。
たとえば株主優待定期預金はインターネット支店(実店舗を持たないインターネット上の支店)では提供されないことがほとんどで、インターネットバンキングやATMによる口座開設手続きにも基本的に対応していません。
通常の店舗窓口ならば口座開設できますが、銀行によっては一部の支店では例外的に提供が不可能なこともあります。
株主優待定期預金は預入期間や預入金額に制限があるので、自由度の高い資産運用には向きません。しかし適用金利が優遇されています。
具体的には、株主優待定期預金はおもに当該銀行のスーパー定期の店頭表示金利に上乗せ金利がついた特別金利で運用ができ、通常のスーパー定期よりも満期日に受け取る利息が多くなります。
スーパー定期の店頭表示金利は銀行ごとに設定されていますが、現在はほとんどが年0.002%程度です。
一方で株主優待定期預金の上乗せ金利は銀行ごとに違うので、たくさん上乗せされる株主優待定期預金ほど高い金利になります。
上乗せ金利は最低でも年0.05%以上であることが多く、銀行によっては年0.5%以上も上乗せされます。ただし上乗せ金利には、金利情勢に応じて変動する可能性があります。
このように株主優待定期預金は、スーパー定期の店頭表示金利に上乗せ金利がつくのが最大の特徴ですが、上乗せ金利は初回満期日で終了します。
初回満期日以降は、おもに継続日のスーパー定期の店頭表示金利だけが適用されるため、自動継続して運用をつづける場合は、初回満期日を境に低金利になります。
ただし初回満期日やそれ以降に株主優待定期預金を一旦解約して、再び新規で口座開設をすれば、また上乗せ金利つきで預けられます。
その場合は、新規で口座開設するための優待券が必要ですが、優待券は株主優待制度の利用対象者である限り毎年送付されます。
また一部の銀行の株主優待定期預金では、保有株数に応じて上乗せされる金利が変動します。
基本的に保有株数が多いほど上乗せされる金利が増えて、より高い金利になります。さらにそういった株主優待定期預金は、預入限度額も保有株数に応じて変動する(上限が増える)ことが多いです。
ですので、保有株数に応じて上乗せ金利や預入限度額が変動する(増える)株主優待定期預金を利用する場合は、当該銀行の株券を多めに購入するのも一つの方法です。
株主優待定期預金は特別金利で運用できる商品です。
しかし、一般論として適用金利が優遇された定期預金は、当該銀行の業績や金利情勢に応じて金利の変更や取扱廃止などの措置が取られます。
そして株主優待定期預金もその例外ではありません。
たとえば千葉銀行では、株主優待制度の利用対象者に送付していた金融クーポン(優待券と同義)を、2021年3月末から廃止しました。
金融クーポンは千葉銀行で定期預金の金利優遇や、各種金融サービスの手数料割引などのサービスを受けるために必要なので、株主優待定期預金の廃止と同じ意味があります。
しかし株主優待制度そのものは続き、金融クーポンと一緒に毎年送付していたカタログギフトは、2021年以降も提供されました。
さらに千葉銀行は、金融クーポンの廃止と同時に株主優待制度の利用条件の変更も発表しており、2021年3月末からは株券の継続保有期間1年以上の株主しか株主優待制度を利用できません。
また、琉球銀行では2020年6月末から株主優待制度そのものが廃止されました。
琉球銀行では株主優待制度の利用対象者に対して、株主優待定期預金の作成券(優待券と同義)を送付したり、株主総会に参加した株主へお土産を提供していました。しかし、株主優待制度の廃止に伴ってどちらも利用できなくなりました。
このように株主優待定期預金だけではなく、株主優待制度自体が廃止される場合もあります。
ただし、業績や金利情勢に応じて新しく株主優待制度を導入したり、株主優待定期預金の適用金利を引き上げる銀行もあります。
たとえば南都銀行は、2020年3月末から株主優待制度が導入されています。株主優待制度の利用対象者は保有株数や継続保有期間に応じてクオカードや営業地域内の特産品を受け取れます。
株主優待制度および株主優待定期預金の商品概要は銀行ごとに様々です。
たとえば東邦銀行の株主優待制度では、利用対象者にカタログギフトの優遇サービスが提供されます。
他方で広島銀行は株主優待定期預金の内容が充実しており、預入限度額やスーパー定期の店頭表示金利に上乗せされる金利が、保有株数に応じて変動します。
具体的には、保有株数が100株以上〜500株未満だと、預入限度額は200万円で上乗せ金利は年0.05%です。保有株数が500株以上〜2,500株未満だと、預入限度額は300万円で上乗せ金利は年0.1%です。
保有株数が2,500株以上〜5,000株未満だと、預入限度額は400万円で上乗せ金利は年0.2%です。同様に5,000株以上だと、預入限度額は500万円で上乗せ金利は年0.3%です。
そして、りそなホールディングス傘下のりそな銀行と埼玉りそな銀行、関西みらい銀行の三行では、共通の株主優待制度が適用されます。
具体的には、保有株数に応じて三行それぞれが提供するポイントサービスのポイントを受け取れます。そして貯めたポイントを提携企業のポイントに交換したり、貯めたポイントに応じてATM利用手数料や振込手数料を無料にできます。
加えて、関西みらい銀行の場合は株主優待定期預金も提供しており、同行のスーパー定期の店頭表示金利に年0.1%の上乗せ金利がついた特別金利で運用できます。
また、大東銀行の株主優遇定期預金(株主優待定期預金のオリジナル名称)は、預入限度額が1,000万円と非常に多いのが特徴です。
一般的な株主優待定期預金は預入限度額が少なめで、200万円や500万円ほどに設定されている場合が多いです。
気になる適用金利は、同行の1年もののスーパー定期の店頭表示金利に年0.1%の上乗せ金利がついた値です(2021年9月24日現在)。