確定拠出年金では、加入者自身が運用商品を選び、その運用結果によって将来受け取る資産額が変わります。
運用商品の中には、投資信託だけでなく、定期預金などの「元本確保型商品」もあります。
元本確保型は値動きを抑えたい人に向く一方、長期間すべてを定期預金だけで運用すると、インフレに負けたり、資産成長の機会を逃したりする可能性があります。
| 制度 | 特徴 |
|---|---|
| 企業型DC | 企業が制度を導入し、事業主が掛金を拠出するのが基本。規約により加入者も上乗せ拠出できる場合がある |
| iDeCo | 個人が自分で加入し、掛金を拠出して運用する個人型確定拠出年金 |
どちらも、制度内で提示された商品の中から加入者が運用先を選びます。
確定拠出年金の定期預金は、制度内で選べる元本確保型商品の一つです。
通常の定期預金と同じように、一定期間の金利が設定され、満期を迎えると利息が付きます。
ただし、通常の定期預金と違い、満期になったからといって自由に現金として引き出せるわけではありません。
満期を迎えた資金は、確定拠出年金口座の中で再び運用されます。
確定拠出年金では「元本確保型商品」という表現が使われます。
定期預金の場合、商品条件どおりに満期まで保有すれば元本が確保される設計です。
ただし、制度全体として手数料がかかるため、口座全体の残高が拠出額累計を下回ることはあり得ます。
特にiDeCoで少額拠出を行い、低金利の定期預金だけで運用すると、手数料負担の影響が相対的に大きくなります。
一般の定期預金は、満期時に現金として引き出せます。
また、多くの円定期預金では満期前でも中途解約でき、その場合は所定の中途解約利率で利息を計算して元本を払い戻します。
一方、確定拠出年金は老後資金を形成する制度なので、原則として受給開始年齢に達するまで、口座外へ自由に現金として引き出すことはできません。
確定拠出年金の老齢給付金は、原則60歳から受け取りを開始できます。
ただし、60歳時点で通算加入者等期間が10年未満の場合は、受給開始可能年齢が61歳〜65歳へ後ろ倒しになる場合があります。
iDeCoでは、受給権が発生した後、75歳までの間で受給開始時期を選ぶことができます。
確定拠出年金で定期預金を選んでも、原則としてその商品にずっと固定されるわけではありません。
制度内で保有している定期預金を売却・解約し、別の運用商品へ変更する「スイッチング」ができます。
また、今後拠出する掛金の配分先だけを変更する「配分変更」もできます。
「今ある資産を変える」のがスイッチング、「これから入る掛金の行き先を変える」のが配分変更です。
定期預金を満期前にスイッチングすると、その定期預金は中途解約扱いとなり、商品所定の中途解約利率が適用される場合があります。
元本自体は確保されても、予定していた利息より少なくなることがあります。
金利上昇局面で古い低金利定期から新しい商品へ移す場合も、「失う利息」と「今後得られる利息」を比較してください。
iDeCoでは、加入者が支払った掛金が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、全額所得控除されます。
そのため、所得税・住民税の負担を軽減できる可能性があります。
この税制メリットは、運用商品として定期預金を選んだ場合でも受けられます。
資産の値上がり益という面では、投資信託の方が大きな成長を期待できる場合があります。
しかし、掛金の所得控除は運用商品に関係なく適用されます。
定期預金を選んでも「掛金控除」という大きな制度メリットは残る一方、長期の資産成長という面では低リターンになりやすい、という整理が正確です。
一般的な定期預金の利息には、個人の場合、原則20.315%の税金がかかります。
一方、確定拠出年金の制度内で得た運用益は、運用中は非課税です。
そのため、確定拠出年金内の定期預金では、利息に対して通常の預金利息課税が都度かかるわけではありません。
確定拠出年金の資産は、将来、年金または一時金などとして受け取ります。
年金として受け取る場合は公的年金等控除、一時金として受け取る場合は退職所得控除の対象になります。
ただし、他の退職金や公的年金との受取時期によって課税関係が変わることがあるため、受取直前には税制を確認してください。
企業型DCでは、事業主が拠出する掛金は原則として加入者の給与として課税されず、企業側では一定の税務上の取扱いを受けます。
加入者がマッチング拠出を行う場合、その加入者掛金は全額所得控除の対象です。
2026年4月から、企業型DCのマッチング拠出について、加入者掛金が事業主掛金額を超えてはならないという制限が撤廃されました。
2026年12月1日から、iDeCoの加入可能年齢の引上げと、企業型DC・iDeCoの拠出限度額の引上げが予定されています。
加入可能年齢は一定の要件のもとで70歳未満まで拡大され、掛金の所得控除を受けられる期間も延びます。
また、会社員等の拠出限度額も見直されます。
本ページは2026年8月時点なので、実際に2026年12月以降に加入・増額する場合は最新の限度額を確認してください。
確定拠出年金の積立金には、本来、特別法人税という税制があります。
しかし長期間にわたり課税停止措置が続いています。
2026年現在は課税停止中であり、特別法人税については将来の税制変更リスクとして認識しておくとよいでしょう。
一般の定期預金は、通常、口座保有そのものに毎月の管理手数料はかかりません。
一方、iDeCoでは制度を維持するための手数料がかかります。
2026年8月現在、国民年金基金連合会の手数料は、
・新規加入・移換時:2,829円
・掛金納付時:1回105円
です。
これに加えて、運営管理機関や事務委託先金融機関の手数料がかかる場合があります。
国民年金基金連合会は、2027年1月の掛金引落し分から、加入中の掛金納付時手数料を105円から120円へ引き上げる予定です。
新規加入・移換時の2,829円は変更されません。
iDeCoの手数料は制度改正で変わるため、古い「毎月○円」という情報を固定的に覚えない方が安全です。
実際には、手数料の徴収元・徴収方法は機関によって異なり、掛金から直接差し引かれるもの、個人別管理資産から差し引かれるものがあります。
運営管理機関ごとの手数料体系を確認してください。
iDeCoでは、自分で運営管理機関を選びます。
選ぶときは、
・口座管理手数料
・定期預金など元本確保型商品の有無
・投資信託の本数・信託報酬
・Web・アプリの使いやすさ
・サポート体制
などを確認します。
「定期預金だけで運用するつもりだから商品数は関係ない」と思っていても、将来スイッチングしたくなる可能性があります。
・値下がりする商品を持ちたくない
・退職が近く、資産の値動きを抑えたい
・近いうちに受給予定で、価格変動リスクを取りたくない
・一時的な退避先として利用したい
特に受給開始が近い人にとって、定期預金は資産の値動きを抑える役割を持ちます。
長期間すべてを定期預金で運用すると、次の点がデメリットになります。
・株式や債券に比べて期待リターンが低い
・物価上昇に負ける可能性がある
・長期の複利成長を得にくい
・手数料負担の影響が相対的に大きくなる
「元本が減らないこと」と「実質的な購買力が減らないこと」は別です。
たとえば定期預金金利が年1%で、物価上昇率が年2%なら、預金残高は増えても実質的な購買力は低下します。
老後まで20年・30年ある人は、元本確保だけでなく、インフレに負けない運用も検討する必要があります。
確定拠出年金では、資産の一部を定期預金、一部を株式・債券などの投資信託へ配分できます。
たとえば「定期預金30%、投資信託70%」など、自分の年齢・リスク許容度に合わせて組み合わせる方法があります。
退職が近づいたら、投資信託の一部を定期預金へスイッチングし、価格変動リスクを下げる方法もあります。
確定拠出年金で運用する定期預金も、預金保険制度の対象となる預金商品があります。
一般預金等は、預金者1人につき1金融機関ごとに名寄せされ、元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。
同じ銀行に一般の普通預金・定期預金と、確定拠出年金の定期預金がある場合、預金保険上は合算して扱われる点に注意してください。
詳しくは定期預金とペイオフをご覧ください。
一般の定期預金とiDeCoの定期預金の合計が1,000万円を超える場合、預金保険制度を考慮して別の金融機関を選ぶことも一つの方法です。
ただし、iDeCoの運営管理機関を選ぶ際は、ペイオフだけでなく、手数料・商品ラインナップ・使いやすさを含めて総合判断する方が実務的です。
企業型DCでは、制度を導入する企業が運営管理機関や商品ラインナップを決めます。
加入者は提示された商品の中から選択しますが、iDeCoのように自分で好きな金融機関へ直接変更することは通常できません。
転職時などには、企業型DCから別の企業型DCやiDeCoへ資産を移換することがあります。
企業型DCの加入資格を失った後、一定期間内にiDeCoなどへの移換手続きをしないと、資産が自動移換される場合があります。
自動移換中は運用されず、手数料負担が発生し、通算加入者等期間にも影響するため、退職・転職時は移換手続きを忘れないようにしてください。
1. 老後まで何年あるか
2. 元本割れをどこまで許容できるか
3. 定期預金の金利はいくらか
4. 中途解約利率はどうなるか
5. iDeCoの手数料はいくらか
6. 投資信託との組み合わせは必要か
7. 同じ銀行の預金残高が1,000万円を超えていないか
8. 2026年12月以降の制度改正の対象になるか
はい。運営管理機関の商品ラインナップに元本確保型の定期預金があれば選択できます。
定期預金自体をスイッチングすることはできますが、原則として受給開始年齢に達するまでiDeCo口座の外へ自由に現金として引き出すことはできません。
はい。掛金の所得控除は運用商品に関係なく適用されるため、定期預金を選んでも対象です。
必ず損とはいえません。値動きを抑えたい場合には有効ですが、長期ではインフレ負けや低リターンの可能性があります。
預金保険制度の対象となる定期預金であれば対象です。同じ金融機関の一般預金等と名寄せされ、元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。
※本ページは2026年8月時点の制度をもとに解説しています。iDeCo・企業型DCの加入資格、拠出限度額、加入可能年齢、手数料、税制、運用商品、受給要件は制度改正や運営管理機関によって異なります。特に2026年12月1日に制度改正が予定されているため、実際の加入・増額・受給時には厚生労働省、iDeCo公式サイト、各運営管理機関の最新情報をご確認ください。
