結婚をすると、定期預金の変更事項に関する諸手続きを金融機関にしなければなりません。
変更手続きに必要な書類や持ち物は、運転免許証などの本人確認書類、新旧両方の氏名を確認できる戸籍謄本や戸籍抄本などの公的書類、取引金融機関のすべての通帳、すべてのキャッシュカード、その取引金融機関に登録しているすべての届出印などが一般的です。
金融機関に預け入れている定期預金は、結婚によって姓や住所などが変わると他の様々な書類や契約などと同様に変更事項に関する諸手続きを行わなければなりません。
結婚をしたら、定期預金に関する諸手続きとして何をどのように進めればよいのでしょうか?
民法の規定では、婚姻届を提出する際には夫か妻どちらかの姓を選択することになっています。
結婚によって姓が変わったときには、金融機関に対して姓が変わったことを通知する名義変更届、それに関連して届出印の変更届、また結婚によって住所が変われば住所変更届も提出する必要があります。
はじめに都市銀行や地方銀行など、一般的な金融機関の定期預金に関する変更手続きから見ていきましょう。
ひとつの金融機関に複数の口座を持っているときは、例えば定期預金口座だけを名義変更して普通預金口座はこれまで通り旧姓名義のままにしておくことはできません。
どれか一つでも口座の名義変更や住所変更をすれば、すべての口座の名義や住所を変更しなければなりません。
まず口座の名義変更手続きに必要な書類や持ち物としては、運転免許証などの本人確認書類(記載事項の変更届済みのもの)、新旧両方の氏名を確認できる戸籍謄本や戸籍抄本などの公的書類、取引金融機関のすべての通帳とすべてのキャッシュカード、その取引金融機関に登録しているすべての届出印などがあげられます。
また届出印を新しく変更する場合には、これまでの届出印の他に新しく登録する印鑑も必要となります。
なお住所に変更がある場合は、名義変更に必要な運転免許証などで同時に手続きできます。
原則として名義変更の手続きは、通帳の名義人本人が金融機関の窓口で行います。多くの金融機関では取引店以外の支店でも名義変更の手続きができます。
しかし当座預金口座での取引があったりすると、金融機関によっては取引店以外の支店では手続きができなかったり、印鑑証明書や個人番号カードなどの別途提出書類が必要になることもあります。
ですので手続きのために金融機関に出向く際には、必要書類について事前に取引店に電話などで問い合わせておきたいです。
口座の名義を変更するには、名義変更届を金融機関の窓口に提出します。
その際に届出印の変更の希望や住所の変更がある場合には、あわせて改印届や住所変更届を提出します。
提出した変更届と持参した確認書類等で変更内容の確認ができれば、通帳は新しい名義に変更されます。
これまでの通帳をそのまま利用したければ通帳に印字された名前の部分を手書きで新名義に修正してくれます。
また通帳の名前の印字自体を新しい姓に変更したければ、新名義で新しい通帳に繰り越しして、古い通帳と共に本人に渡してもらえます。
届出印については、実は結婚によって姓が変わってもそのまま結婚前と同じように使用できる金融機関が大半です。
しかし、取引のたびに金融機関の窓口で届出印と姓が異なる理由を尋ねられるなどの面倒が生じる可能性があるので、改印しておく方が無難です。
また多くの金融機関では、キャッシュカードもこれまでの名義のままで利用できるようになっています。
もちろん名義変更したキャッシュカードの再発行も可能で、結婚による改姓でのキャッシュカードの再発行なら通常は発行手数料がかかりません。
それではインターネット銀行では、どうでしょうか?
インターネット銀行では名義変更届の提出方法は金融機関によって若干ちがいますが、ホームページ上からログインして名義変更の手続き請求をするケースが多いです。
すると後日、名義変更に必要な関連書類が送られてきます。
送付されてきた名義変更届に必要事項を記入して、各々のインターネット銀行で定められた本人確認書類などを添付して返送しましょう。
一度の手続きで住所変更もできますので、もし住所に変更があれば一緒に手続きをします。
またインターネット銀行によっては、まずホームページ上で名義変更や住所変更などの申し込みだけを先に済ませておく方法の場合もあります。
その後、各変更手続きの確認に必要な本人確認書類を携帯電話やスマートフォンなどで撮影して、その画像をインターネット銀行のホームページにアップロードすれば手続きが完了します。
都市銀行などと同様に、インターネット銀行でもこれまでのキャッシュカードを利用できるケースがほとんどです。
しかし名義変更したキャッシュカードの再発行には費用がかかることもあり、金融機関によって対応は異なります。
なお、ほとんどのインターネット銀行で届出印は不要なので、その場合にはもちろん改印届を提出する必要はありません。
結婚に関わる定期預金の諸手続きは、旧姓と新姓を証明したり、住所が変わったことを証明できる確認書類を準備する手間が必要なこともあり、つい後回しにしがちです。
しかし名義変更などの手続きを後回しにすると、急に定期預金を中途解約する必要ができた時などに不都合が生じます。
定期預金を預け入れ期間の途中で解約するには、金融機関の窓口で本人確認をしなければなりません。
しかし本人確認書類と口座の名義人の姓が異なれば、その場ですぐに解約手続きが行えません。
結局、名義変更の手続きを終えた後でなければ、定期預金の解約手続きもできません。
また通帳やキャッシュカードを紛失したり、盗難にあったときも同様です。
通帳やキャッシュカードの再発行手続きには本人確認が欠かせませんが、金融機関に登録されている名前と本人確認証の名前が異なれば再発行手続きはそこでストップします。
通帳やキャッシュカードの名義変更と再発行手続きの両方を済ませなければ、自分のお金をおろすこともできません。
また、給与所得者であれば口座が旧姓名義のままになっていると、会社からの給与振込が名義人相違ということで入金できなくなる可能性があります。
さらに名義変更しないままの状態で取引金融機関に万一のことがあれば、もっと深刻です。
ペイオフで保証されるはずの定期預金も口座名義と実際の氏名とが異なれば、本人とみなされない可能性があります。
その他にも問題点があります。
住所変更がされないままだと、本人確認時の煩わしさだけにとどまらず、定期預金の満期のお知らせなどの重要な郵便物が手元に届かないなどの不都合が出てきます。
一方で、結婚して姓が変わっても故意に口座や通帳の名義変更をしないケースがあります。
結婚で姓が変わったからと口座や通帳の名義変更をすると、独身時代からコツコツと積立してきた定期預金などの個人的な貯蓄が夫婦の共有財産になるのでは?という心配からです。
しかし結婚前の貯蓄は、貯めてきた本人のものです。夫婦の共有の財産とはならず、配偶者に権利のないことは民法で規定されています。
ただし結婚前からの貯蓄だと証明するには、定期預金などへの預け入れが結婚する以前だったことを示す必要があります。
そのためには結婚前に貯めたことが分かるように、「預け入れをした当時の通帳」をきちんと保管しておけば問題ありません。
そうすれば、定期預金の名義が新しい姓になっていても、結婚前からの貯蓄であると主張できます。
その他に、結婚前の姓に愛着があるので姓が変わっても旧姓のままの口座を持っていたいと考える人もいます。
しかし、戸籍と口座の名義が一致しないと様々なトラブルの原因になりがちです。
名義を変更しないことによって、急を要する時に必要な手続きができないのでは本末転倒です。大切な資産を守るためには、できるだけ早めに各種変更手続きをしたいです。