退職金を受け取った人向けに、通常の定期預金より高い金利を設定する「退職金専用定期預金」「退職金特別プラン」などを用意している金融機関があります。
最大の特徴は高い金利ですが、その多くは3か月など短期間だけ適用される優遇金利です。
「年2%」「年3%」という数字だけを見るのではなく、何か月その金利が適用されるのか、満期後はどうなるのか、投資商品の購入条件が付いていないかまで確認する必要があります。
退職金専用定期預金は、退職前後の一定期間にある人や、退職金・確定拠出年金の一時金などを受け取った人を対象に、通常より有利な金利を適用する定期預金です。
金融機関によって、
・退職金専用定期預金
・退職金特別プラン
・退職金運用プラン
・セカンドライフ向け特別定期
など名称はさまざまです。
「退職金そのものしか預けられない商品」だけではありません。2026年現在は、退職前後の一定期間にあることを条件として、新たな資金を対象にする商品もあります。
しかし、日本銀行はマイナス金利政策をすでに終了し、2026年には政策金利の誘導目標を1.0%程度としています。
一般の預金金利も2021年当時より上昇しているため、退職金専用定期が「通常定期より何倍高いか」だけでなく、現在の通常定期との金利差を比較する必要があります。
退職金専用定期の高金利には、主に次の理由があります。
・優遇期間が3か月程度と短い
・新しい顧客・まとまった資金を獲得したい
・満期後の資産運用相談につなげたい
・投資信託やファンドラップとのセット商品がある
高金利は金融機関が長期間保証するものではなく、短期間の顧客獲得キャンペーンとして設計されているケースが多いと考えると分かりやすいでしょう。
退職金専用定期で特に注意したいのが、金利は通常「年率」で表示されることです。
たとえば2026年4月1日〜9月30日の三井住友信託銀行の退職金特別プランでは、定期預金コースのスーパー定期3か月が年2.20%です。
仮に1,000万円を年2.20%の3か月定期へ預けた場合、単純計算の税引前利息は、
1,000万円 × 2.20% × 3/12 = 55,000円
です。
預金利息には原則20.315%の税金がかかるため、税引後は概算で約43,827円となります。
「年2.20%」を見て、3か月で22万円の利息が付くと考えないよう注意してください。
退職金向けプランには、定期預金だけで利用できるコースと、投資信託・ファンドラップなどを同時購入することで定期預金金利を大きく上乗せするコースがあります。
たとえば同じ三井住友信託銀行の2026年のプランでは、投資運用コースにスーパー定期3か月・年12.00%という表示があります。
しかし、これは対象となる運用商品と定期預金を組み合わせることが条件です。
定期預金部分の高い金利だけを見ず、投資商品側の価格変動リスク・購入時手数料・信託報酬・解約条件まで含めて判断してください。
2026年の三井住友信託銀行では、退職金特別プランは退職から3年以内、ご退職予定者向け特別プランは退職予定日の1年前から利用できます。
「退職金を受け取って1年以内」という条件だけで探すと、利用可能な商品を見落とす可能性があります。
「退職金専用」という名称でも、退職金そのものだけが対象とは限りません。
2026年の三井住友信託銀行では、退職前後の利用条件を満たせば「新たなご資金」を対象としています。
金融機関によっては、他行から移した預金や、一定期間内に入金された新規資金などを対象にすることがあります。
退職したこと・退職金を受け取ったことを確認するため、金融機関によっては、
・退職所得の源泉徴収票
・退職証明書
・退職金受取口座の通帳・取引明細
・企業年金・確定拠出年金の一時金受取書類
などの提出・提示を求めることがあります。
必要書類は商品ごとに異なるため、来店前に確認しておくと手続きがスムーズです。
最低預入額が100万円、500万円などに設定されている商品があります。
上限も退職金受取額まで、数千万円まで、1億円までなど金融機関によって異なります。
高金利でも、自分の退職金額が最低預入額に届かなければ利用できません。
退職金は1,000万円を超えることも珍しくありません。
利息の付く普通預金・定期預金などの一般預金等は、金融機関が破綻した場合、1人・1金融機関につき元本1,000万円までと破綻日までの利息等が預金保険制度で保護されます。
同じ金融機関に普通預金500万円、退職金定期1,000万円があれば、一般預金等は合計1,500万円です。
「退職金専用定期だから別枠で1,000万円保護される」わけではありません。
安全性を最優先する場合は、預金保険の保護上限を意識して複数の金融機関へ分散する方法があります。
たとえば2,000万円の退職金を預金だけで管理するなら、既存預金残高も確認したうえで、複数銀行に分ける方法が考えられます。
ただし、同一金融グループでも別銀行として預金保険が適用されるケースと、合併・事業譲渡等で扱いが変わるケースがあるため、実際の金融機関単位を確認してください。
退職金専用定期で最も見落としやすいのが、優遇期間終了後です。
3か月の特別金利が終わると、
・通常の定期預金へ自動継続
・普通預金へ入金
・満期時点の店頭表示金利で再継続
などの扱いになります。
「特別金利がずっと続く」と思い込まず、満期日の前に次の預け先を決めておくことが大切です。
退職金を預けると、金融機関から投資信託、ファンドラップ、保険などを案内されることがあります。
提案を受けること自体に問題はありませんが、定期預金とは性質が異なります。
投資商品には、
・元本割れ
・価格変動
・為替変動
・購入・保有・解約時の手数料
などがあります。
退職金は今後の生活を支える重要な資金です。「定期預金の満期が来たから」という理由だけで、理解していない商品へ一括して移さないことが重要です。
セットプランでは、定期預金部分に非常に高い金利が表示される場合があります。
しかし、投資商品側で価格が下落すれば、定期預金で増えた利息を上回る損失が発生する可能性があります。
比較するときは、
・定期預金で得られる税引後利息
・投資商品へ回す金額
・購入手数料
・年間の信託報酬・管理費
・想定される価格変動
を一体で考えます。
退職直後は、今後の生活費、住宅修繕、医療・介護、旅行、子どもへの援助など、必要資金がまだ見えていないことがあります。
その段階で退職金全額を長期商品へ固定する必要はありません。
短期の退職金専用定期は、「運用方針を考えるための待機場所」として使う方法もあります。
| 資金 | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| すぐ使うお金 | 数年以内の生活費・緊急資金 | 普通預金・短期預金 |
| 守るお金 | 元本の安定を重視 | 定期預金・個人向け国債等 |
| 育てるお金 | 長期的な資産成長 | 分散投資等 |
すべての退職金を「高金利だから定期預金」「勧められたから投資信託」と一つの商品に集中させるより、用途ごとに分ける方が管理しやすくなります。
元本の安全性を重視する退職金では、定期預金だけでなく個人向け国債も比較対象になります。
定期預金には預金保険の上限がありますが、個人向け国債は国が元利金の支払いを行います。
一方、定期預金は金融機関ごとのキャンペーン金利を利用できるメリットがあります。
短期の特別金利は退職金専用定期、長めに安全運用する資金は個人向け国債など、目的に応じて使い分ける方法があります。
2026年現在も、退職金向け特別プランを提供する金融機関があります。
一方で、商品は期間限定・金利変更・終了が頻繁にあります。
「今すぐ申し込まないと損」と焦るのではなく、現在利用できる複数商品を比較することが大切です。
1. 特別金利は年率何%か
2. その金利が適用されるのは何か月か
3. 税引後の実際の利息はいくらか
4. 退職前後何年まで利用できるか
5. 退職金そのもの以外の資金も対象か
6. 最低・最高預入額はいくらか
7. 投資商品とのセット条件がないか
8. 満期後の金利・資金の行き先はどうなるか
9. 同じ金融機関の預金合計が1,000万円を超えないか
10. 退職後の生活資金を別に確保しているか
通常の定期預金より高い特別金利が設定される商品があります。ただし3か月程度の短期であることが多く、年率表示なので実際に受け取る利息は期間分だけです。
金融機関によります。2026年には退職から3年以内を対象とする商品もあります。「1年以内」と一律には言えません。
いいえ。通常は年率表示です。年2%なら3か月分の税引前利息は概算で元本の0.5%相当です。
利息の付く一般預金等は、原則として1人・1金融機関につき元本1,000万円までと破綻日までの利息等が預金保険で保護されます。既存預金も合算されるため、全額保護を重視するなら分散を検討します。
定期預金部分の利息だけでは判断できません。投資商品側の元本割れリスク、手数料、信託報酬などを含めた総額で比較する必要があります。
※本ページは2026年8月時点の金融機関・日本銀行等の公表情報をもとに一般的な仕組みを解説しています。退職金向け定期預金の金利、対象期間、最低預入額、必要書類、満期後の取扱い、セット商品の条件は金融機関ごとに異なり、予告なく変更・終了される場合があります。申込時には必ず各金融機関の最新の商品概要説明書をご確認ください。
