退職金専用の定期預金は、高い金利であることが最大の特徴です。ただし、基本的に退職金を受け取ってから一定期間内に預けることが条件なので、退職時にしか使えない限定商品です。
退職金としてまとまったお金が入ったときに、普通預金にお金を入れたままでは、ほとんど利息がつきません。
「お金が減るのは嫌だけど、まったくお金が増えないのも面白くない…。」そんな人にとって選択肢となるのが定期預金であり、その定期預金のなかでもより有利な商品が「退職金専用の定期預金」です。
「退職金専用の定期預金」とは、その名の通り、退職金を預けておくための定期預金です。「退職金専用定期預金」「退職金運用プラン<定期預金コース>」といった名称で、銀行や信用金庫などの金融機関で取り扱われています。
退職金専用の定期預金は高い金利ですが、預け入れをするには条件があります。たとえば、退職金を受け取ってから一定期間内に預けるなどです。
また、退職金であることが証明できる書類(退職証明書や退職所得の源泉徴収票など)の提出も必要です。まさに退職したときにしか使えない限定商品です。
もし、退職金をもらっても当面の使い道が決まっていないのなら、高い金利である退職金専用の定期預金にいったんお金を預けておくのも一つの方法です。
退職金専用の定期預金の特徴は、何よりも高い金利であることです。
たとえば2021年4月7日現在、都市銀行銀行の金利は、普通預金で年0.001%、300万円以上の定期預金で年0.002%となっていますが、退職金専用の定期預金なら年0.5%と大幅に高い金利が設定されています。比較的金利の高いネット銀行の定期預金と比べても有利な商品です。
なかには、年2%〜3%といった金利を設定している銀行もあります。昨今の超低金利の環境下においては高い金利の商品といえます。
ただし、退職金専用の定期預金の金利が高いのには理由があります。それは、預入期間が1〜6ヵ月と短いのです。
たとえば年1%の金利が設定されているとしても、それが適用されるのは預入期間の3ヵ月間までで、期間が過ぎたら通常の定期預金の金利が適用されることになります。
仮に、年利1%(3ヵ月もの)の退職金専用の定期預金に300万円を預け入れたとしましょう。3ヵ月後に受け取れる利息は、300万円×1%×3/12ヵ月=7,500円(税引き後概算5,977円)です。そして3ヵ月経過後、口座にあるお金は年0.01%などの店頭表示金利の定期預金に引きつがれることになります。
退職金専用の定期預金には注意点もあります。それは預け入れるにあたり、通常の定期預金とは違っていくつかの条件があることです。
条件は金融機関によってさまざまですが、
(1) 退職金を受け取ってから1年以内に預け入れる
(2) 1人1回の利用に限る
(3) 預け入れの上限は退職金受取金額まで
などが基本です。
なかには、「預入金額500万円以上」「当行の口座を年金受取口座に指定すること」「NISA(少額投資非課税制度)口座の開設」などのハードルをもうけている金融機関もあります。
退職金専用の定期預金口座の開設を申し込むときには、自分の条件と金融機関の条件が当てはまるのかどうかを商品概要でよく確認しましょう。
退職金専用の定期預金の代表的な商品を2つご紹介します。都市銀行や地方銀行の商品ですが、信用金庫や信用組合やJAバンクでもとり扱っている場合があります。
ただし残念ながら、ゆうちょ銀行やインターネット銀行ではとり扱いがありません。
ランキングは、金利の高い商品から掲載をしています。すべて3ヶ月ものの退職金専用の定期預金です。(2021年4月7日現在)
1位:三井住友信託銀行「退職金特別プラン 定期預金コース」
三井住友信託銀行の退職金専用の定期預金は、預入期間が3ヵ月で最大金利は年0.80%です。預入金額は500万円以上〜1億円以下です。
条件を満たすことにより、最大金利年0.80%(預入期間3ヵ月)となります。その条件とは「ライフプランに関するコンサルティングを受けること」です。
参考:退職金特別プラン ご退職予定者向け特別プラン 定期預金コース
2位:神奈川銀行「かなぎん退職金定期預金」
神奈川銀行の「かなぎん退職金定期預金」は、預入期間が3ヵ月で金利は年0.60%です。預入金額は100万円以上〜3,000万円以下です。
利用できるのは1回限りで、退職金を受け取った日から1年以内に申し込まなければなりません。退職金であることを確認できる資料(退職所得の源泉徴収票など)と、退職金を受け取った口座の預金通帳を店頭窓口で提示します。
ランキング形式で、退職金専用の定期預金を紹介しました。もし利用を検討しているのなら、早めに預け入れをした方がよいかもしれません。
なぜなら、三菱UFJ銀行やみずほ銀行など、退職金専用の定期預金のとり扱いを中止する(あるいは設定金利を大幅に引き下げる)金融機関が次々とあらわれているからです。
なぜ金融機関は、退職金専用の定期預金の取り扱いを中止するのでしょうか?その背景には金利情勢の急激な変動があります。
日本銀行では2016年にマイナス金利政策を導入しましたが、この影響により各銀行は収益が圧迫されることになりました。そのため多くの銀行が定期預金など預金商品の金利の引き下げを行いました。
金融機関にとって、まとまったお金である退職金はぜひとも集めたいところですが、一方で退職金専用の定期預金の高い金利が収益を圧迫します。
退職金専用の定期預金に預けたとしても、3ヵ月後の預入期間が終わるころには「他の金融商品の購入はいかがですか?」と金融機関からセールスされる可能性が高いです。
それらの商品で運用することが悪いわけではありませんが、もし知識や経験がないのなら、金融機関にすすめられるがままに買ってしまうと痛い目を見る可能性があります。
「退職金をほんの少しの間、退職金専用の定期預金に入れるだけ」と軽く考えていては、金融機関の営業マンや窓口担当者の口車に乗せられてしまうでしょう。
退職金専用の定期預金を利用するときは「自分のお金は自分でしっかり守る!」という強い意志をあわせ持っておくことが大切です。