まとまった資金を定期預金へ預けるときは、1本の定期預金へ全額を入れるのではなく、複数に分けて預ける方法があります。
定期預金の分散には、大きく「金額の分散」「満期時期の分散」「金融機関の分散」の3つがあります。
目的はそれぞれ異なり、中途解約による利息低下を防ぐ、金利上昇へ対応しやすくする、預金保険制度の保護範囲を意識する、といった効果があります。
| 分散方法 | 主な目的 |
|---|---|
| 金額を分ける | 必要な分だけ解約しやすくし、全額中途解約を避ける |
| 満期時期をずらす | 金利変動に対応しやすくし、定期的に資金を見直せるようにする |
| 金融機関を分ける | 預金保険制度の保護範囲を意識し、資金アクセス先も分散する |
最も簡単なのは、預ける金額そのものを複数の定期預金へ分ける方法です。
たとえば300万円を預ける場合、「300万円を1本」にするのではなく、「100万円を3本」に分けます。
その後、急に100万円が必要になった場合、300万円を1本で預けていると、商品によっては全額を中途解約する必要があります。
100万円ずつ3本に分けていれば、必要な1本だけを解約し、残り200万円を満期まで維持できます。
一般的な円定期預金を満期前に解約すると、当初の約定金利ではなく、金融機関所定の中途解約利率が適用されます。
定期預金を小分けにしておけば、急な資金需要が発生したときに、必要な金額に近い定期預金だけを解約しやすくなります。
これは「元本割れを防ぐ」というよりも、満期まで維持できる部分を増やし、受取利息の減少を抑えるための分散です。
詳しくは定期預金の解約方法をご覧ください。
金額の分け方に決まった正解はありません。
たとえば500万円なら、「100万円×5本」「200万円+100万円×3本」など、将来必要になりそうな金額に合わせて分けられます。
ただし、金融機関や商品によって最低預入額や預入単位が異なります。
次に重要なのが、満期時期を分散する方法です。
たとえば600万円を、1年定期200万円、2年定期200万円、3年定期200万円のように分ける方法があります。
また、すべて1年定期でも、預入時期を数か月ずつずらして満期日を分散させる方法があります。
満期日をずらすと、一定の間隔で資金が満期を迎えるため、その時点の金利を確認して預け替える機会を作れます。
金利が上昇している局面で、全額を長期定期へ固定すると、その後さらに高い金利が登場しても、満期まで利用しにくくなります。
満期を分散していれば、順番に満期を迎えた資金から、その時点の高い金利へ預け替えることができます。
この方法は「ラダー型」などと呼ばれる考え方に近く、将来の金利を正確に予測できない場合でも、金利変動の影響を一度に受けにくくできます。
一方、今後金利が低下する局面では、現在の高い金利を長期間固定した方が有利になる場合があります。
したがって、満期分散は「常に最も高い利息を得る方法」ではありません。
将来の金利が上がるか下がるかを当てるのではなく、予想が外れても資金の一部ずつ見直せる状態を作ることが目的です。
まとまった資金を保有している場合は、銀行そのものを複数に分ける方法もあります。
たとえば、都市銀行、地方銀行、信用金庫、ネット銀行など複数の金融機関へ分散します。
金融機関を分ける理由の一つが、預金保険制度です。
定期預金や利息の付く普通預金などの一般預金等は、預金保険制度によって一定範囲が保護されます。
保護されるのは、預金者1人につき1金融機関ごとに、一般預金等を合算して元本1,000万円までと、破綻日までの利息等です。
1,000万円を超える部分は、破綻金融機関の財産状況に応じて支払われるため、一部が戻らない可能性があります。
預金保険制度で注意したいのが、「1口ごとに1,000万円」ではないことです。
たとえば同じ銀行に、普通預金300万円、定期預金500万円、別の定期預金500万円を持っている場合、一般預金等は合計1,300万円として名寄せされます。
同じ金融機関の中で定期預金を何本に分けても、預金保険制度の保護上限が増えるわけではありません。
預金保険上の分散を目的とするなら、別の金融機関へ分ける必要があります。
同じ銀行のA支店とB支店に分けても、預金保険制度上は同じ金融機関として合算されます。
また、普通預金と定期預金を分けても、どちらも一般預金等であれば合算対象です。
「口座を分けること」と「金融機関を分けること」は、預金保険上は意味が異なります。
無利息・要求払い・決済サービスを提供できるという3要件を満たす決済用預金は、預金保険制度で全額保護されます。
一方、利息の付く普通預金や定期預金は一般預金等として、前述の1,000万円まで+利息等という保護になります。
金融機関を複数に分ける意味は、預金保険制度だけではありません。
システム障害、カード紛失、不正利用対策による利用停止、災害などで一つの銀行を一時的に使えなくなった場合でも、別の銀行に資金があれば生活資金へアクセスしやすくなります。
そのため、生活防衛という観点からも、すべての資金を一つの金融機関へ集中させない考え方には意味があります。
分散すればするほど安全とは限りません。
口座が増えると、残高・満期日・パスワード・キャッシュカード・相続時の口座確認など、管理するものが増えます。
また、銀行によっては残高や取引状況によってATM・振込手数料の優遇が決まるため、資金を細かく分けすぎると優遇条件を満たしにくくなる場合があります。
分散は「多ければ多いほど良い」のではなく、自分で確実に管理できる範囲で行うことが重要です。
定期預金では、金融機関によってキャンペーン金利に差があります。
しかし、わずかな金利差のために多数の銀行口座を作ると、管理負担が大きくなることがあります。
実際の利息差を金額で計算し、口座開設や資金移動の手間に見合うかを判断しましょう。
分散を考える前に、近いうちに使う可能性がある資金は普通預金など流動性の高い場所へ残しておくことが重要です。
生活費、医療費、修理費などの緊急資金まで定期預金へ入れると、中途解約の原因になります。
「当面使わないお金」を定期預金へ回し、その中で金額・満期・金融機関を分散するのが基本です。
たとえば2,000万円を一般的な円預金で保有し、預金保険制度の範囲を意識する場合、A銀行へ1,000万円、B銀行へ1,000万円というように分ける方法があります。
ただし、普通預金や他の定期預金も同じ銀行にある場合、それらも一般預金等として合算されます。
したがって「定期預金だけで1,000万円」ではなく、その金融機関にある保護対象の一般預金等全体を確認する必要があります。
300万円なら、たとえば次のような考え方があります。
| 定期預金 | 金額 | 満期 |
|---|---|---|
| 1本目 | 100万円 | 1年後 |
| 2本目 | 100万円 | 2年後 |
| 3本目 | 100万円 | 3年後 |
毎年1本ずつ満期が来るため、資金が必要ならそのまま使い、必要がなければその時点の金利を見て再運用できます。
ここは混同しやすいポイントです。
同じ銀行で100万円×3本にする「金額分散」は、中途解約時の利息低下を小さくするためには有効です。
しかし、預金保険制度の保護額を増やす効果はありません。
一方、別々の金融機関へ分ける「金融機関分散」は、預金保険制度の保護範囲を分ける効果があります。
次のような人は、定期預金を分散するメリットが大きいでしょう。
・まとまった資金を定期預金へ預けたい人
・途中で一部の資金を使う可能性がある人
・金利が今後さらに変動すると考えている人
・1金融機関に1,000万円を超える一般預金等がある人
・資金を一つの銀行へ集中させたくない人
定期預金は、一般的な円定期預金であれば元本保証であり、預金保険制度による保護もあります。
そのため、株式などの価格変動商品と同じ意味で大量の分散をする必要があるわけではありません。
必要な分だけ解約できる金額設計、定期的に見直せる満期設計、預金保険制度を意識した金融機関分散。この3点を自分の資金量に合わせて考えるのが現実的です。
まとまった資金を預ける場合は、金額・満期時期・金融機関を適度に分散すると、中途解約、金利変動、預金保険制度への対応がしやすくなります。
いいえ。一般預金等は1人・1金融機関ごとに合算されます。同じ銀行なら複数口座・複数定期に分けても、預金保険制度による元本の保護は原則合計1,000万円までです。
いいえ。同じ金融機関であれば支店が異なっても合算されます。
将来さらに金利が上がる可能性を考える場合は、短めの期間や満期時期をずらす方法が使いやすくなります。ただし、将来の金利は確実には予測できません。
一律の正解はありません。預金額、預金保険制度の保護範囲、資金管理のしやすさを考え、自分で確実に管理できる数にすることが重要です。
※預金保険制度では、定期預金や利息の付く普通預金などの一般預金等は、預金者1人につき1金融機関ごとに合算して元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。商品や金融機関によって預金保険の対象可否が異なる場合があるため、実際の預入時には各金融機関や金融庁・預金保険機構の最新情報をご確認ください。
