銀行の店頭やウェブサイトで表示されている金利は、通常「名目金利」です。
一方、実質金利は、名目金利から物価変動の影響を差し引いて考える金利です。
預金金利がプラスでも、物価上昇率の方が高ければ、預金の購買力は実質的に低下する可能性があります。
名目金利とは、物価変動を考慮せず、金融機関が表示している金利そのものです。
たとえば、定期預金の金利が「年1.00%」と表示されている場合、この1.00%が名目金利です。
実質金利とは、名目金利からインフレ率の影響を除いて考える金利です。
お金が何%増えたかではなく、そのお金で買える商品やサービスの量、つまり購買力がどれくらい増減したかを見るために使います。
金利とインフレ率がそれほど高くない場合、実質金利は次の式で概算できます。
実質金利 ≒ 名目金利 − インフレ率
たとえば、名目金利5%、インフレ率2%なら、実質金利は約3%です。
より正確には、次のフィッシャー方程式を使います。
実質金利 =(1+名目金利)÷(1+インフレ率)−1
名目金利5%、インフレ率2%なら、
1.05 ÷ 1.02 − 1 = 約0.0294
つまり、厳密な実質金利は約2.94%です。
「5%−2%=3%」は分かりやすい近似値で、厳密には約2.94%です。
100万円を年5%で1年間預けると、税引前では105万円になります。
一方、100万円で買えた商品・サービスが1年後に102万円必要になったとすると、購買力の増加は名目上の5%より小さくなります。
この違いを表すのが実質金利です。
たとえば名目金利1%、インフレ率3%の場合、近似的な実質金利は次のとおりです。
1% − 3% = 約−2%
預金残高は増えていても、物価の上昇速度の方が速いため、実質的な購買力は低下します。
実質金利がマイナスということは、預金や債券で受け取る金利よりも、物価上昇による貨幣価値の低下の方が大きい状態です。
預金通帳の残高が減るわけではありませんが、同じ金額で買える商品・サービスの量が減る可能性があります。
物価が下落するデフレでは、インフレ率がマイナスになります。
名目金利1%、インフレ率−2%なら、近似的な実質金利は次のとおりです。
1% −(−2%)= 約3%
物価が下がると、同じ金額で買える商品・サービスの量が増えるため、貨幣の実質価値は上がります。
名目金利5%、インフレ率−2%の場合、近似式では実質金利は約7%です。
近似式ではそのとおりですが、厳密式では次のようになります。
1.05 ÷ 0.98 − 1 = 約7.14%
デフレ率や名目金利が大きくなるほど、近似式と厳密式の差も大きくなります。
| 比較項目 | 名目金利 | 実質金利 |
|---|---|---|
| 意味 | 表示されている金利 | 物価変動を考慮した金利 |
| 物価の影響 | 考慮しない | 考慮する |
| 用途 | 利息計算、商品比較 | 購買力の増減を見る |
| 代表的な式 | 表示金利そのもの | 名目金利−インフレ率(近似) |
預金では、名目金利だけでなく税金も考慮する必要があります。
個人の預貯金利息には、原則として20.315%の税金がかかります。
そのため、実際の購買力を考えるなら「税引後実質金利」を見る方が現実に近くなります。
簡易的には、まず税引後名目金利を求め、その後にインフレ率を差し引きます。
税引後名目金利の概算 = 名目金利 × 0.79685
税引後実質金利 ≒ 税引後名目金利 − インフレ率
名目金利1%の税引後相当金利は、概算で約0.79685%です。
インフレ率を2%とすると、税引後実質金利は近似的に、
0.79685% − 2% = 約−1.20%
となります。
預金金利が1%あっても、物価が2%上昇していれば、税引後の購買力は実質的に低下する可能性があります。
より正確には、税引後名目金利を使って次のように計算します。
税引後実質金利 =(1+税引後名目金利)÷(1+インフレ率)−1
金利・インフレ率が低い範囲では近似式との差は小さいですが、長期の資産計画では区別して考えるとより正確です。
定期預金を比較するときは、まず名目金利で金融機関・商品を比較します。
そのうえで、物価上昇率と税金を考慮し、「実質的に購買力が増えるか」を確認すると、預金の本当の価値を判断しやすくなります。
たとえば定期預金が年1.5%でも、物価上昇率が3%なら、近似的な実質金利は−1.5%です。
「前年より高金利だから有利」というだけでは十分ではありません。
一般的には、総務省が公表する消費者物価指数(CPI)の前年同月比や年間平均の変化率などが参考になります。
ただし、実際に感じる物価上昇率は、食費、住居費、光熱費、医療費など、各家庭の支出構成によって異なります。
CPIは、多くの商品・サービスを一定の方法で集計した物価指標です。
食料品を多く買う家庭と、住宅費・教育費の比率が高い家庭では、同じCPIでも家計への影響が異なる場合があります。
そのため、実質金利を見る際は「公的なインフレ率」と「自分の支出の物価上昇」の両方を意識すると実用的です。
実質金利には、将来の予想インフレ率を使う「予想実質金利」と、実際に起きたインフレ率を使う「事後実質金利」という考え方があります。
定期預金を預ける時点では将来のインフレ率は確定していないため、実際には予想実質金利を考えることになります。
1カ月・3カ月など短期定期では、将来の物価変動の影響は比較的小さくなります。
一方、3年・5年など長期の固定金利定期では、その間のインフレ率によって実質価値が大きく変わる可能性があります。
長期固定金利を選ぶ際は、将来の金利上昇だけでなく、物価上昇も考慮してください。
固定金利定期では名目金利は満期まで変わりませんが、物価上昇率は変化します。
そのため、契約時には実質金利がプラスでも、途中でインフレ率が上昇すると実質金利がマイナスになる可能性があります。
普通預金などの変動金利は、政策金利・市場金利の変化に応じて金利が引き上げられる可能性があります。
インフレ局面で政策金利が上昇し、それに伴って預金金利も上がれば、実質金利の低下を一部緩和できる場合があります。
ただし、預金金利が物価上昇率と同じ速度で上がる保証はありません。
日本銀行の金融政策は、預金金利や貸出金利を通じて実質金利にも影響します。
2026年8月時点では、日本銀行は無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.0%程度で推移するよう促す方針です。
政策金利が引き上げられると名目金利は上昇しやすくなりますが、同時にインフレ率がどう動くかによって実質金利は変わります。
企業や家計の行動には、名目金利だけでなく、物価変動を考慮した実質的な借入コスト・運用利回りが影響します。
実質金利が低いと借入れや投資を促しやすく、実質金利が高いと需要を抑えやすいと考えられています。
住宅ローンでも、名目金利だけでなくインフレ率を考慮すると、返済負担の実質的な重さが変わります。
ただし、家計では物価だけでなく賃金の上昇率も重要です。インフレが進んでも所得が増えなければ、返済負担が軽くなるとは限りません。
債券投資でも、表面利率や利回りがインフレ率を下回ると、実質的な購買力が減る可能性があります。
長期債券ほど、将来のインフレ率の変化が実質リターンへ大きく影響します。
| 名目金利 | インフレ率 | 実質金利の近似値 |
|---|---|---|
| 1.0% | 0% | 約1.0% |
| 1.0% | 2.0% | 約−1.0% |
| 2.0% | 2.0% | 約0% |
| 3.0% | 2.0% | 約1.0% |
| 1.0% | −2.0% | 約3.0% |
預金を選ぶとき、最初に見るのは名目金利ですが、それだけで実質的な利益は決まりません。
税金・インフレ・預入期間まで考慮すると、名目金利が高くても実質リターンが低い場合があります。
物価変動を考慮せず、金融機関が表示している金利そのものです。
名目金利からインフレ率の影響を除いて考える金利です。
簡易的には「名目金利−インフレ率」で概算します。厳密には「(1+名目金利)÷(1+インフレ率)−1」です。
近似的には約−1%です。
残高そのものが減る意味ではありません。物価上昇によって、預金で買える商品・サービスの量が減る可能性があるという意味です。
はい。個人の預貯金利息には原則20.315%の税金がかかるため、税引後実質金利で考えるとより現実に近くなります。
インフレ率がマイナスになるため、同じ名目金利でも実質金利は高くなります。
名目金利は金融機関が表示する金利、実質金利は物価変動を考慮した金利です。
実質金利は簡易的には「名目金利−インフレ率」で計算できますが、厳密には「(1+名目金利)÷(1+インフレ率)−1」です。
預金ではさらに税金がかかるため、実際の購買力を考えるなら税引後実質金利も重要です。定期預金を選ぶときは、名目金利だけでなく、物価上昇率、税金、固定・変動、預入期間まで含めて判断しましょう。
